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規制に負けず、UXを損なわず、DIDウォレットを開発した!

本日、週刊少年ジャンプ(集英社)の人気漫画「約束のネバーランド」にて、ブロックチェーンを活用したコミュニティサービスを提供した旨のプレスリリースをメディア各社にて掲載させていただきました。

ホヤホヤのプレスリリースですが、今回はそこで記載させていただいたブロックチェーンを活用したID管理システム『Gaudiy-DID System』について、Gaudiyの開発チームでフロントからバックエンド、ブロックチェーンのスマートコントラクトまでオールラウンドで活躍をしている勝又さん(@winor30)にお話を聞いてみました。

写真:ブロックチェーンエンジニア 勝又 拓真(@winor30

大学院卒業後、2016年にヤフー株式会社に入社。バックエンドエンジニアとして『Yahoo! JAPAN』のトップページのレコメンドAPIの開発に携わる。その頃からブロックチェーンの思想や将来性に興味を持ち、勉強会やセミナー、イベントに参加している中でGaudiy代表の石川と出会い、副業をきっかけにGaudiyに入社。現在はコミュニティアプリのフロント開発からバックエンド開発、ブロックチェーン周りのアーキテクチャ設計、開発など幅広く活躍している。新しい技術に対する探究心も強く、Gaudiyの掲げるバリューの1つである『NewStandard』を地で行く。

 

なぜ人気漫画でDID(Decentralized Identity)を導入するのか?

ーーなぜ「約束のネバーランド」という人気コンテンツで、DIDが必要なのでしょうか?

この質問には、まずGaudiyが挑戦しているエンタメコンテンツ領域の課題から説明した方がわかりやすいので、そちらからお話しします。

これまでのエンタメコンテンツの産業では、IP(Interllectual Propery:知的財産権)コンテンツが、プラットフォーマーを中心としてさまざまなメディアで展開され、ユーザーはそれぞれのメディアで消費行動を行っています。

それらによりいくつかの課題が生まれました。例えば、大きな課題としては、コンテンツ側がユーザー接点をプラットフォームに委託していることで、ユーザーとの直接的な接点を持てないということ。ゆえに直接的なマーケティング施策や、データ、ユーザープールがコンテンツ側に溜まらないという状況にあります。

つまり、IPコンテンツの消費行動が各メディア、各プラットフォームで個別最適に留まっており、コンテンツの消費体験を最大化できない。その問題に対して、GaudiyではIPコンテンツ軸となるファンコミュニティを中心とした新たなユーザー体験を提供することで、コンテンツの消費体験を最大化できると考えています。

これは世界中で同じ問題が起こっています。ディズニー専用動画サブスクサービス「Disney+」も、それらの要因から生まれたものと言われています。

ちょっと分かりにくいですね。もう少しかみ砕いて話すと、コンテンツとファンとの関係が密になり、コンテンツへのエンゲージメントや熱量が高くなるようなユーザー体験をするということです。現在、Gaudiyが提供するコミュニティの中で熱狂的なファン同士の交流やファン主催の企画、創作活動などが行われています。

ーーまだDIDが登場しませんが…

…ですね。これから説明します。

Gaudiyでは、コンテンツの消費体験を最大化するために3つのアプローチで進めています。

① ファンコミュニティ
IPコンテンツ全体を統括するオープンなファンコミュニティサービスで、ユーザーによるファン活動や消費活動を促進しながら、大きなコアユーザーのプールを作ります。

② ソリューションシステムの提供、共同開発
Gaudiyでは様々なエンタメ系から金融までファン活動を促進する幅広いソリューションを提供しています。ひとつの例としては、ブロックチェーン技術を活用して、2次流通可能な電子書籍や二次創作などコンテンツをコミュニティ内外で活用可能にするソリューションなどがあります。

③ サービス連携システム
音楽、ゲーム、マンガ、アニメなどIPを活用しているが、分散された、プラットフォーム、メディア間で連携できるシステムです。このシステムでDIDの仕組みが採用されています。

ーーなぜサービス連携でDIDが必要になるのでしょうか?

そもそも「DIDとは?」という話にもなりますが、分散型IDとも呼ばれていて簡単に説明すると…

これまでは購買履歴などユーザーに紐付く情報を各プラットフォーマーが管理していました。DIDは、その情報をユーザー個人がコントロールできる権限を持ち、ユーザーが許可した範囲で情報を連携させていく考え方もしくは仕組みになります。そのDIDの仕組みを実装する上で、プライバシーの保護や耐改ざん性の観点や、もともとブロックチェーンの技術が基となった考え方でもあるので、ブロックチェーンが使われることが多いです。

プレスリリースにも書かれていますが、そのDIDの仕組みを使うことで5つの価値に繋げられると考えています。

開発コストを大幅に削減できる
『Gaudiy-DID System』では、簡単にDIDの仕組みを導入できるSDKを提供して、導入に掛かる開発コストを削減します。

セキュリティ対策コストを削減できる
ユーザーが個人のデータを管理し、ブロックチェーンやKMSなどセキュリティに強い仕組みを構築することで、連携する各メディアでのプライバシー保護に関するコストを削減します。

ブロックチェーンを使ったデジタル決済インフラを提供できる
ブロックチェーンを使った決済システムを簡単に導入できる仕組みを提供します。

クロスメディア施策の運用コストを削減できる
各メディアのデータをDIDで参照できることで、連携に掛かるコストを削減して、さらに複数のメディアが連動した施策も実施できるようになります。

IPコンテンツが中心となる経済圏を構築できる
決済システムやデータ、コンテンツが連携されることで、例えば、好きなIPコンテンツのゲームをプレイすればするほど、他のメディアでより良い特典が得られる体験が受けられます。また、決済サービスにDIDが連携されると、食事や移動など普段の生活での消費活動を好きなIPコンテンツへの貢献に繋げることができ、ファンコミュニティでは報酬やレベルアップ、各メディアでは限定コンテンツが楽しめるなど、ファンにも還元されるIPコンテンツを中心として経済圏が実現できます。

なおDIDの仕組みは、既に一部のGaudiyが展開するファンコミュニティにて既に導入されています。

 

どのように『Gaudiy-DID System』を開発しているのか?

ーーどのようにサービス間でDIDを連携する仕組みを開発したのでしょうか?

簡単にいうと、メールアドレスだけでDIDを発行して、認証をおこなうためのOpenIdConnnectを使ってサービスとDIDが連携できるSDKを開発しました。

メールアドレスだけでDIDをどのように管理しているかというと、SDKの中でDIDを発行するブロックチェーンウォレットを生成していて、そのウォレットがDIDを管理できる仕組みをSDKに持たせています。

ーーどんな技術を採用しましたか?

バックエンドには「AWS」とブロックチェーンのマネージドサービスとして「Kaleido」を採用しています。

Kaleidoを採用するに至った理由としては、フルノードを管理する上で、自分でノードを立てるか、マネージドサービスを使うかで考えたときに、運用や監視を考慮するとマネージドサービスを利用した方がコストが掛からないと判断しました。また、マネージドサービスの中でもKaleidoが、イベント監視やAWSとの連携しやすさなどの柔軟性と、スマートコントラクトの管理など運用のしやすさで採用を決めました。

またAWSは、暗号化サービスが他のクラウドサービスより柔軟に使えたのと、Kaleidoとの連携のしやすさが採用を決めた理由になります。

ーー開発する上で、どのようなことに苦労されましたか?

ブロックチェーンやDIDを使った難解な仕組みを、アプリやサービスを運用している企業に導入してもらうために、いかに簡単にSDKを組み込めるかをとても意識しました。

例えば、一般的にMetamask、Trust WalletなどのブロックチェーンウォレットはUXが悪いと評価されていますが、ウォレットをSDKに内包してSDKが管理することで、ブロックチェーンウォレットにおけるユーザーのUX向上とクライアントの導入コストの削減を同時に実現しました。

ーー技術的なところで大変だったことはありますか?

ブロックチェーンウォレットの秘密鍵をどう管理するかの部分ですね。

というのも、改正資金決済法における暗号資産カストディ業務に対する規制に該当してしまうと、暗号資産交換業者としての登録をする必要があるので、該当しないよう秘密鍵を保有しない仕組みの検討には苦労しました。実際、この規制によって多くのブロックチェーン企業がピボットに至っています。それらを最新技術を活用し、規制に引っかからないアーキテクチャを実現しました。

ーー具体的にはどのような仕組みを検討したのでしょうか?

はい、SDK内で生成されるブロックチェーンウォレットの秘密鍵の管理は、AWS KMS(Key Management Service)で秘密鍵を暗号化と復号化するキーを管理して、秘密鍵は保存せず暗号化された秘密鍵のみを保存する仕組みになります。さらにパスワードレス認証によりセキュリティを強化しています。

このパスワードレス認証からウォレット生成、秘密鍵の管理までの一連の処理をSDKで内包することで、クライアントは複雑な仕組みを理解しなくても簡単にDIDの仕組みを導入できるようになります。

ーーその他で苦労されたことはありましたか?

強いていえば、DIDやOpenIdConnnectなど細かい仕様のキャッチアップには苦労しました。
とにかく技術グログや原典となるW3Cの情報などを読み漁って理解を深めていきました。

Decentralized Identifiers (DIDs) v1.0

Self-Issued OpenID Connect Provider DID Profile v0.1

 

今後はどのように発展させていくのか?

ーー勝又さんが考える今後の展開や展望について教えてください。

そうですね。まずはIPコンテンツの各メディアで『Gaudiy-DID System』が使われるように、現在対応しているUnityとWeb以外にもAndroidやiOSなどにも対応させていきます。導入における開発コスト削減やUX向上は引き続き追求していきたいですね。

また、やはりIPコンテンツを中心とした経済圏の構築は実現させたいです!

今回の『約ネバ』も好きな漫画の1つですし、好きなミュージシャンもいますが、やはりコンテンツに触れ合える機会や時間は限られています。『Gaudiy-DID System』を使えば、IPコンテンツ関連以外の普段から利用しているお店も連携できますので、普段の生活から好きなIPコンテンツの新しいサービスが受けられる基盤をGauidyで創っていきたいですね。(了)